壊れてしまった世界を歌い、それを丸ごと慈しむことができる大森靖子の本領が発揮されたアルバムだ。タイトルの“金継ぎ”とは、破損した器の修復部分を人体に無害な金で覆う伝統技法のことだが、古びや欠落に美と価値を見いだす、わびさびの文化にも通じている。ギターの残響音を引きずりながら軋むような心象を歌い上げてゆく「夕方ミラージュ」で幕を開ける本作には、日本語詞の「NIGHT ON THE PLANET」や「KEKKON -Kintsugi-」など、シングルとして先行リリースされた楽曲群もアルバムバージョンとして収録。鮮烈なインパクトを与えるロックやダンスポップの中で、抜き差しならない人間模様を描きながら、破綻の先に執念を帯びた美を見いだしてゆく。ミュージックビデオに出演していた橋本愛のゲスト歌唱や、大沢伸一 (Shinichi Osawa) のアレンジ参加にも注目。