水の中のASIAへ

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松任谷由実という作家の引き出しの多彩さは、彼女が多くの人々に愛され続けている理由の一つではあるが、ボサノヴァやフォークロアを丁寧に引用したアルバム「孔雀」のように、その時代ごとに興味を持った音楽や文化なりに影響されて制作された結果、シーンに思いもよらぬカウンターを与えることも少なくない。本作は、ジャカルタ、香港、大連といった街を舞台に、それぞれの風景や歴史、戦争や人間関係を個人的な情感に重ね合わせた作品。"HONG KONG NIGHT SIGHT"は、松任谷正隆が自身のアルバムのために制作した楽曲をカバー、また、"大連慕情"は、ユーミン作品にはあまりない父へ想いをはせる歌であるが、実際の父親の姿とはまったく関係ない創作であるのが興味深い。安易にその国や場所ごとのサウンドや音階を引用することなく、自身の音楽の中で制作したがゆえに、ある種普遍的なサウンドへと昇華されている。

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