ひみつスタジオ

ひみつスタジオ

「4人の音がなるべく分かりやすいように、シンプルにしていこうという感じでやっています」。草野マサムネ(Vo/G)はアルバム『ひみつスタジオ』について、Apple Musicに語る。前作『見っけ』から3年半ぶり、17作目のオリジナルアルバムとなる本作は、メンバー4人の演奏を中心に据えることで、スピッツというバンドの芯を明確に伝えるものとなった。 コロナ禍の2020年はバンドで集まることもままならず、リモートで制作した楽曲を配信するなど試行錯誤を重ねた。田村明浩(B)は、再び4人でスタジオに入って音を出した時の感動を忘れられないとは語る。「久々に4人で集まって最初に録ったのが『跳べ』。もう、リハーサルの段階からうれしくてしょうがなくて。この曲には、音を合わせるのがとにかく楽しいと感じている4人の演奏が詰まっています」。その言葉に草野も大きくうなずく。「バンド結成当時の初心がよみがえるくらいの感動があったよね」 民謡を取り入れた「未来未来」や、初めてバンドメンバー全員でボーカルを録った「オバケのロックバンド」など、新機軸を感じさせる楽曲もある。「変な曲を作りたいと常々思っている。失敗もあるかもしれないけど、恐れずにやっていきたい」と、草野は言う。新しいことに取り組むときは、必ず4人で意思決定し、レコーディング中は自分の出番がなくてもスタジオに出向いてメンバーを見守る。その制作スタイルは結成当時からずっと変わらない。田村は言う。「それが当たり前で、それがスピッツだと思っている」 4人は30年以上の長い時間を共にしてきたが、バンドを楽しむ気持ちが薄れることはなく、その思いが彼らの音楽を常に新鮮なものにしている。草野は言う。「学生時代に楽器を持って集まった時から、ある意味ずっとアマチュアリズムを保って、ワクワクし続けている。“秘密基地でワクワク”を続けられるのは本当に幸せなこと。ずっとワクワクすることを忘れずに、オレらのワクワクをみなさんにも楽しんでもらいたい。」。田村が続ける。「4人全員がそう思っているから、ここまで続けてこられたんじゃないかな」。そんな2人に、アルバムに収録されたいくつかの楽曲を解説してもらおう。 i-O(修理のうた) 草野:このアルバムを象徴するような曲です。本当はもっとアップテンポな曲にしようと考えていたけど、こういう曲調で始まるアルバムは今までになかったから新しいかも、と思って1曲目にしました。この曲を作る前にジャケット写真ができていたので、歌詞はジャケットの世界観に寄せて書きました。あのロボットは実在するもので、すごくよくできてるんです。どこかで披露できたらいいですね。 美しい鰭 草野:『名探偵コナン』の映画主題歌を、という話がきた時に「オレらでいいんですか?」と思いましたが、台本を読ませていただいて、このストーリーだからスピッツなのかなと考えました。海が舞台の話だったので「波」や「秘密」、「抗う」といった言葉を抽出してイメージを広げていきました。(劇中の人物を思わせる歌詞について)あんまり説明するのも野暮なんですけど(笑)、いろんなふうに取れる言葉を入れているので、想像を膨らませていただけたら幸いです。 オバケのロックバンド 田村:いつもは草野の作ったデモテープをみんなで聴いて選曲会議をするんですけど、この曲に関しては草野が「みんなで歌うから」という感じで持ってきました。最初は「え、オレら歌える?」と戸惑ったけど、草野が「大丈夫だから」と。レコーディング現場では草野以外のメンバーはみんな、いっぱいいっぱいでした(笑)。 未来未来 草野:Deep Forestのように、デジタルミュージックにエスニックな民謡を入れる手法を日本的にやれないかなと思って温めていたアイデアを使いました。映画『ブレードランナー』でSF世界に和服姿の女性の広告が出てくるシーンがあり、あんなふうに唐突に和のイメージが入ってくる意外性をイメージしています。今回ゲストで歌っていただいた朝倉さやさんは、以前スピッツの楽曲を民謡調でカバーしてくださった動画を上げていて、気になっていたのでオファーしました。鳥肌が出るくらいすごい歌唱でした。 めぐりめぐって 草野:RCサクセションの「よォーこそ」のように、ライブの1曲目にやる楽しい曲を意識して作りました。コロナ禍でリリースのあてもないけれど、とりあえずレコーディングをしている時に、「今、何をやってるの?」と聞かれても答えられなくて「秘密の活動です」と言っていたんです。そこから「ひみつのスタジオ」という、このアルバムを象徴するキーワードが生まれました。「ひみつのスタジオでじっくり作りました。聴いてください」という曲です。

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