ヘンデルの『メサイア』は宗教音楽とエンターテインメントを絶妙に融合した壮大なオラトリオ。クリスマスからイースター、つまりイエス・キリストの降誕から受難、復活の物語を描いている。合唱、アリア、レチタティーヴォは高い音楽性とドラマティックな要素を兼ね備えており、その独創性と革新性は他に類を見ないものだ。威厳に満ちたテノールの独唱による「Ev’ry Valley Shall Be Exalted」、はつらつとした「For Unto Us a Child Is Born」、そしてあまりにも有名な「Hallelujah Chorus」など、一つ一つの楽曲はどれをとってもヘンデルの輝かしい最高傑作である。それゆえ、これまでに数えきれないほどのレコーディングが行われてきたが、1996年に録音された本作ほどフレッシュでのびのびとした演奏はない。指揮者のポール・マクリーシュが率いる歌手たちと演奏家たちは、この歓喜にあふれた完全無欠の名作を、さらに感動的に、生き生きと奏でている。2021年に空間オーディオでリマスターされたこの美しいパフォーマンスは、かつてないほど衝撃的なサウンドとなっている。