夏の海をテーマとしたトータリティーの高い前作「A GIRL IN SUMMER」の後、2年11か月とユーミンにしては長いブランクを経てリリースされた本作は、自身のヒストリーを俯瞰し、みずみずしい感覚でそれぞれのサウンドを再生させた、バラエティーに富んだ作品。また、アートワークや"まずはどこへ行こう"の歌詞そのままに、旅がコンセプトに掲げられていることもあってか、トライバルなビートに南米風の旋律が絡む"Flying Messenger"、タンゴに正面から向き合った珍しい楽曲"Bueno Adios"をはじめ、随所に民族音楽のエッセンスが振りかけられているのも楽しい。特筆すべきは、加藤和彦とのデュエットで奏でられた"黄色いロールスロイス"。かつて一度だけユーミンをヴォーカルに迎えてライブが行われた、サディスティック・ミカ・バンドの復活ともいえるグラムロックサウンドに驚かされる。小原礼や屋敷豪太ら、当時加藤が始めたバンド、VITAMIN-Qの余裕ある演奏も聴きどころ。
- 1981年