アルゼンチンタンゴ、クラシック、ジャズなど多様な音楽のエッセンスを融合した、めくるめく音世界に心を委ねる。本作は作曲家／ピアニスト三枝伸太郎が率いる、ピアノ、バンドネオン、弦楽、パーカッション、ボーカルからなる10人編成のアンサンブル、三枝伸太郎 Orquesta de la Esperanzaのセカンドアルバム。東京音楽大学で作曲を学び、キャリアの初期に名バンドネオン奏者、小松亮太のサポートを行った三枝は、ピアニストとしてタンゴ、ブラジル音楽、ジャズ、ポップなど幅広いジャンルで活躍し、映画音楽や舞台音楽の作曲も数多く手掛ける気鋭のアーティストだ。その複雑で緻密なスコアは演奏家に高度な技術と音楽性を求めるものだが、卓越した演奏力を持つOrquesta de la Esperanzaのメンバーは、躍動感あふれるプレイで三枝のイメージを見事に表現している。三枝とのデュオでも活動する小田朋美によるボカリーズも魅惑的だ。天国のアストル・ピアソラに、2010年代の終盤に日本のミュージシャンがこんな音楽を作り出したことを伝えたくなる快作。