

「世界はカラフルなものにあふれている。そう気付くきっかけになってもらえたらという思いを込めました」。マルシィの吉田右京(Vo/G)は、サードアルバム『Flavors』についてApple Musicに語る。「僕は自分に足りないものがあったときに、そこばかりに目がいく性格」と明かす吉田は、ひときわポップな「holiday」を書いた時、新しい扉を開いた感覚があったという。「満たされない部分ばかりに目を向けていると、なんで自分だけ…みたいな気持ちになるけど、ふと視点を変えて周りを見渡すと、自分の大切なものが見えてくる。僕にはバンドのチームや家族、僕らの音楽を聴いてくれるファンの方々がいる。それはみんな同じで、その人だけの恵まれているところが、きっとある。この曲は自分自身にとっても、大切なものにもう一度気付くための楽曲になりました」。本作のアルバムカバーアートには、野菜や果物、花などが彩り豊かに描かれている。まるで香りまで漂ってくるようなビジュアルには、“世界にはこんなにも多彩なフレーバーがあふれている”というメッセージが込められている。 すべてが満たされた人も、すべてが満たされない人もいない。マルシィの3人もまた、互いを補い合い、響き合うことで、一つの音楽を紡いでいる。例えば、ベースのフジイタクミは注意深いタイプで、「ライブの本番ギリギリまでベースを弾いていないと落ち着かない」と話す。一方でギターのshujiはチャレンジ精神が旺盛なタイプで、「みんなに『いやいや、それはさすがに』と言われることもたくさんあります」と笑う。性格の異なる3人が集まったからこそ、マルシィは自分たちらしさを守りつつ、新しい挑戦ができる。これまでにないアプローチにも踏み込みながら、色とりどりの楽曲が並ぶ本作について、ここからは3人にいくつかの楽曲を解説してもらおう。 恋人 shuji:ギターにはめっちゃ時間をかけました。実はフレーズがなかなかまとまらなくて、録音当日ギリギリまで練り続けて、ニュアンスも音作りもすべてこだわり尽くした感じです。イントロではフィンガーピッキングを取り入れて丸みのある音を出し、そのままピッキングせずにスライドして戻すというプレイがすごく難しくて、何度もテイクを録り直しました。 隣で 吉田:「ラブソング」のアンサーソングとして書いた曲。最初にサビだけができた段階で、両思いというか、思い思われているような温かい楽曲にしたいというイメージが浮かびました。そこから制作を進めていくうちに、「ラブソング」と通じる部分があることに気付いたんです。この書き方は自分にとっても初めての試みで、歌詞は何稿も重ねました。結果的に「ラブソング」だけでなく、他の楽曲へのアンサーになっている部分もあるので、そこにも注目してもらえたらうれしいです。コーラスの入れ方にもこだわっていて、「ラブソング」の流れを受け継いでいることが伝わるよう、意図的に構成しています。 フリージア ピエロ 吉田:この2曲は歌詞がちょっとエグいかもしれない。でも、人にはいろんな感情があって当然だし、日常のさまざまなシチュエーションに寄り添える音楽でありたいという気持ちが常にあります。誰かが誰かを大切に思うという根本的な感情も、その背景や状況によって、いろんなかたちがある。だからこそマルシィとしては、そうした感情や関係性を時間をかけて丁寧に描いていきたいと思っています。 願いごと 吉田:日本武道館のライブでは、この曲を歌いながら泣いてしまいました。ずっと目標にしていた場所だったので、今のマルシィを余すことなく届けたいという思いで必死に歌いました。そしてこの曲の時にお客さんたちが一斉にライトをともしてくれて、その瞬間、客席から「うわあ、すごい…」という声がイヤモニ越しに聞こえてきた。その光景を見た時、「こんなにもたくさんの人が、僕たちの音楽を愛してくれているんだ」と視覚的にも実感できて、これまでの道のりやいろんな感情が一気に込み上げてきて、自然と涙があふれていました。 フジイ:右京が感極まって歌えなくなった時、会場のお客さんが代わりに歌ってくれたんです。その声を聴いた瞬間、僕もこらえきれずに涙が出ました。 エール 吉田:この曲の歌詞には、僕自身の弱さが込められていて、自分に向けた応援歌のような側面もあります。僕はいつも、自分に対してすごく高いハードルを課してしまって、それをなかなか越えられない日も多いんです。サビの「点数がつけられない日でも」というフレーズは、まさに今、いろいろ勉強しながらもがいている自分の姿そのもの。でも、きっと同じような気持ちを抱えている人は多いんじゃないか。そんなときに、それでも頑張りたいと思えるような、マルシィからのエールを届けられたらという気持ちで作りました。 青空 shuji:間奏部分に、僕の感情が爆発したフレーズが出てきます。楽曲のどこにピークを持っていくかを考えた時、自分の感情を最大限そこにぶつけることで、曲全体に彩りを加えられると思ったんです。そこからさらに細部を磨き上げて、ブラッシュアップしていきました。 Romance shuji:この曲では、ビートから作っていくという新しいアプローチに挑戦しました。ギターのニュアンスもすごく難しくて、特にイントロでは、あえて乾いたカラカラな音にすることで、無機質なギターの存在感を際立たせるようなアプローチが自然と生まれました。 フジイ:ドラムが打ち込みだったので、生のベースをどう乗せるかがすごく難しかったです。機械的なノリに合わせるには、あえてニュアンスを抑える必要があって、そこはかなり試行錯誤しました。