「勝手によく言われてたんだ、俺の音楽はついて行けてないって」と、5作目のアルバムのリリースに先駆けて、ミーク・ミルはZane Loweに語った。「だから俺は最高の音楽を出して、自分の才能をきちんと評価してくれる人たちに見せつけたいんだ。だって、もう10年もこのゲームを続けてるんだから。今年こそ俺の年にしたいと思ったんだ。俺はプロデューサーとスタジオに座って、トップアーティストであり続けようとしてるから」。『Expensive Pain』は、ミーク・ミルのその努力が報われる作品だ。 最も優れた才能を持つMCの一人として長年ラップシーンで認知されてきたミークは、『Expensive Pain』の全編にわたり、ファンクマスター・フレックスの1990年代のフリースタイルのフォロワーが熱狂するようなほぼエンドレスの押韻を繰り出し、ハードルを上げる。一方で「On My Soul」「Love Train」「Love Money」といった楽曲では、現代ヒップホップを席巻しているオートチューンのハーモニーを新たに用いて、レパートリーを広げている。そこにたどり着くのは楽ではなかったと彼は認める。「自主隔離期間中に俺は試みたんだ。作曲家として大きな壁にぶつかってるときだったけど、充分に自信が持てるようになるまで何か月もメロディを学んだよ」とミルは言う。「それでスタジオに戻ったときには、ブースに入ったら何でもやれるって思うぐらい自信を持ててた」 アルバム『Expensive Pain』は、ミーク・ミルが2021年にどんな人生を送っていたかを伝えてくれる。「どんな気分だい／上り過ぎててその愛が本物かどうか分からない時って (How would you feel/When you so lit that you can’t tell if the love real)」と、彼はリル・ウージー・ヴァートとのコラボレーション曲「Blue Notes 2」で問いかける。アルバムではヴァートに加えて、リル・ベイビー、 Lil Durk、A$AP Ferg、Moneybagg Yo、Kehlani、Brent Faiyaz、さらにロンドン出身のMCギグスといった面々をゲストに迎えて、リッチで有名な生活が必ずしも素晴らしいわけではないことを描き出す。“お金があるほど、問題が増える”というのは、少なくともノトーリアスB.I.G.が曲にしたときからある古い考え方だが、同時にミークは、自分を形成したルーツからも決して遠ざかっていないことをみんなに知ってほしいと思っている。「俺は常に地元の近くにいようとしてる」と彼は言う。「実際に地元に行くわけじゃない、それは物理的にできないからね、でも自分がどこから来たのか、そこの人たちが日々どんな経験をしているかということを絶対に忘れないように感じて、理解するようにしている。だから俺が曲を発表するときは、単に踊れる曲ではなくて、人々が心の内で実際に何かを感じられるリアルな感覚があるんだよ」