少ない音符で紡がれていく静謐（せいひつ）なピアノ曲の中で、インテリジェントな美しさが光る。本作は作曲家／ピアニストの中島ノブユキによる、自身のピアノのみで構成されたオリジナルアルバム。NHKの大河ドラマをはじめとする放送音楽や映画音楽で知られ、著名なポップアーティストの編曲も多く手掛けてきた中島は、フランスの国民的シンガー、ジェーン・バーキンの音楽監督兼ピアニストを務めるなど国際的舞台でも活躍する。その音楽性もクラシックからジャズ、ポップまで幅広いが、本作で聴けるのは彼のクラシカルな側面だ。端正な構造の中をたゆたうシンプルかつリリカルなメロディは、普遍的な魅力を輝かせている。またイタリアの名ピアニスト、アルド・チッコリーニが所有していたというピアノを秩父のホールに持ち込んでレコーディングされたサウンドは、ふくよかで温かみを帯びており、中島のシネマティックな音世界を優しく広げている。