小泉今日子というキュートで強烈な個性を一作のアルバムで初めて表現した作品。1984年7月にリリースされた通算5作目の本作は、夜を舞台としたコンセプトアルバムで、この頃のアイドルには珍しくシングル曲を収録していない。セリフも聞こえるジャズ調の「素敵にNight Clubbing」をはじめ、全10曲の作曲を筒美京平、アレンジを船山基紀が手掛け、当時最新鋭だったシンセサイザーやコンピュータを使用したサウンドがポップなメロディを支えている。作詞家陣には当時はまだ新進気鋭だった銀色夏生を3曲で起用し、アクティブだったり恋の相手に積極的だったりする女性像を描いた。ミディアムテンポのバラード「今をいじめて泣かないで」、ノリのいいポップチューン「ラブコールをアンコール」など、ファンに人気の高い楽曲も収録。そして締めくくりは名匠フィル・スペクターの音作りを1980年代のデジタルサウンドでオマージュした「バナナムーンで会いましょう」と、最後まで聴きどころが多い。小泉はこの後、1990年代にかけて突出したオーラを放っていくが、その先駆けとなったアルバムといえるだろう。