

日本のピアノ三重奏団、葵トリオは2016年に結成され、そのわずか2年後の2018年には難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールを制した。その時に演奏したハイドンとシューベルトの作品を収録したデビューアルバムに続いて、本作でも、彼らはピアノ三重奏曲の名作を遺した2人の大作曲家の楽曲をカップリングしている。ベートーヴェンとメンデルスゾーン。一聴した段階で印象付けられるのは、3人のメンバーによる演奏の完璧なまでのバランスの良さだ。秋元孝介のエレガントなピアニズムは決して支配的になることがなく、小川響子のバイオリンの繊細な響き、伊東裕のチェロの優しい音色と美しく溶け合っている。ベートーヴェンの『ピアノ三重奏曲 第1番』では輝きと喜びにあふれた演奏を堪能でき、メンデルスゾーンの『ピアノ三重奏曲 第2番』ではめくるめくようなロマンチシズムに酔うことができる。さらなる活躍への期待も高まる快作。