

ニコラス・アンゲリッシュは米国出身のピアニスト。ソリストとして多くの世界的マエストロや主要なオーケストラとの共演を重ねてきている。そんな彼が本作で奏でるピアノは、ベートーヴェンが亡くなった65年後の1892年にフランスのプレイエル社が製造したもので、鈴の音のようにきらめく高音と迫力ある低音部が特徴的な名器である。このピアノの音は、ベートーヴェンの時代のサイズで編成されたローレンス・エキルベイ率いるインスラ・オーケストラのサウンドとも絶妙に溶け合っている。第4番第1楽章終盤のカデンツァでのピュアで開放的な響きや、第5番第2楽章の華麗な旋律に親しみやすさトッピングするような素朴な音色もこのピアノならではのものといえるだろう。本作は、日本人建築家の坂茂氏が設計し2017年にオープンした施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」でレコーディングされた。