次作『Moondance』と並び、ヴァン・モリソンのキャリアのピークを象徴する傑作。モリソンの抑制されたアコースティックギターの旋律にバックバンドの熟練のプレイが幾重にも折り重なり、サウンドに奥行きを与えている。その即興性がジャズの影響を色濃く感じさせる一方で、フルートやビブラフォンの音色は寓話的世界へとリスナーを導く。そしてその先には北アイルランド出身のモリソンのルーツをうかがわせる、ケルト音楽の深淵が広がっている。オーソドックスなフォークやブルースの表層とは裏腹に、本作はよりスピリチュアルな体験に近いリスニング感覚をもたらしてくれる作品なのだ。また本作はモリソンの故郷、ベルファストでの生活や記憶をテーマにした作品でもある。ただし、彼のストーリーテリングは過去に縛られない。自分の内面をさまよう、意識の流れのようなそれは、ビートニクの詩人たちから続く自由なる旅路だ。そしてその旅は、後半の「Madame George」でハイライトを迎えている。
その他のバージョン
- ニール・ヤング
- JACKSON BROWNE