前知識なくして耳にしたサウンドが自然に心に響く、そんな出会いができたら最高だが、その希に起こる出来事を本作はかなえてくれるかもしれない。ウエストコーストジャズを代表するアルト奏者、アート・ペッパーがマイルス・デイヴィス・クインテットのリズムセクションと共演。太く艶やかなサウンドと芳醇なメロディは、一瞬にして聴き手を魅了することだろう。急ごしらえのセッションだったというが、ぎこちなさやバランスの悪さは感じられず、リズムセクションにもマイルスバンドとは異なるリラックスした雰囲気が感じられ、実に気兼ねない。"You'd Be So Nice to Come Home To"はその至極だが、"Red Pepper Blues"などのブルースも洒脱で、一期一会のセッションに心浮き立つ名作。