ブレイクポイントとなった2作目で、彼らの初期を代表するアルバム。玉置浩二による粘り気の強いボーカルと感情の機微を反映させたソングライティング力がこの音楽の中心となって、大きな渦を作っている。その一端が、井上陽水が作詞した大ヒット曲「ワインレッドの心」(1983年)であり、続く「真夜中すぎの恋」と共に先行シングルとなってアルバムをけん引した。玉置の歌もバンドのプレイも、北海道でのアマチュア時代からキャリアを重ねてきただけに熟練度が高い。さらに松井五郎がこのバンドに初めて歌詞を提供した「マスカレード」、熱い愛情を込めたバラード「あなたに」、鋭いギターにささやくようなボーカルが乗った「つり下がったハート」など、秀逸な楽曲がそろっている。制作時はレコーディングに長い時間を費やしたとされているだけに、しっかりと作り込まれた印象だ。当時からサウンド的なクオリティと歌謡曲にも似た濃厚なエモーションを発する歌のために、どこか異端の存在と捉えられることが多かったバンドだが、この後いっそうカリスマ性を増していった玉置や、それを堅固な音で支えてたメンバーたちを思うと、唯一無二の個性という点でその解釈は間違っていなかったと感じられる。まだ気鋭のバンドだった頃の彼らが生み出した、すぐれたAOR作品だ。
- 2017年
- 1984年
- 2007年