あのち

あのち

「このアルバムは未完結なところがある」。GEZANのボーカル&ギター、マヒトゥ・ザ・ピーポーは、前作『狂(KLUE)』より3年ぶりとなるアルバム『あのち』についてApple Musicに語る。本作にはGEZANのバンドメンバー4人のほか、トロンボーン、パーカッション、総勢15人のコーラス隊Million Wish Collectiveが加わっている。この編成は2021年のFUJI ROCK FESTIVALで初披露された。「その頃コロナのせいで、人が集まるとか声を出すことが制限されていた。それらを奪われたことによって、自分がどんなに魅力を感じていたか、救われていたのかを自覚したんです。だから自分らは流れに逆らって、ステージの上でやってしまおうと」 全体的なイメージとして、“祭り”を思い描いていたとマヒトゥ・ザ・ピーポーは言う。「盆踊りのように、徹夜で踊り続ける祭りがずっと好きで。誰が主役でもなく、ダンスを競うでもなく、やぐらや火を囲んでみんな一定の動きで回り続ける。そういう空間で生まれる力をイメージしていました」。繰り返しのリズムが生み出す躍動感、声が重なることで生まれる熱。無数の声が伝える鋭いメッセージは、混乱した時代を生きる人々の心を揺さぶる。 「“全部、反戦歌でもあるよね”って、これは友だちに言われて気付いたんですけど」と、マヒトゥ・ザ・ピーポーは続ける。「戦争というのは、日々を生きたり、でたらめに音楽を作ったり、そういう当たり前の景色や尊厳を奪うもの。だから自分の中で戦争は圧倒的に嫌だという気持ちがあり、それが一つのテーマになっているかもしれない」 人間の声というプリミティブな響きに立ち返り、時代の先端を捉えた『あのち』。しかしここは終着点ではなく、マヒトゥ・ザ・ピーポーはこの先につながる景色を思い描いている。「アルバムを聴き終えて、またみんな当たり前の暮らしに向かう。そこには数十分のアルバムでは描き切れない圧倒的な情報量があると思っている。自分らはそこにどう関われるかを考え、暮らしのレベルに溶けていきたい。その意味で『あのち』は未完結な作品でもあるんです」

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