

K-Popグループ、BLACKPINKでリードラッパーとメインダンサーを務めるタイ出身のLISAは、YG Entertainment初の外国人アーティストとして世界的スターの仲間入りを果たした。2021年には2曲収録のシングル『LALISA』でソロデビューを果たし、とくに威勢のいいラップ調の「MONEY」が大ヒット。アイドル時代に手にしたけた外れの富を豪語するこの曲のテーマは、続くデビューアルバム『Alter Ego』にも流れている。YG Entertainmentからの独立、自身のマネージメント会社Lloud設立を経て2025年にリリースされたこのアルバムは、LISAのキャリアの新たな1ページを飾る作品となっている。 他のK-Pop作品の例に漏れず、『Alter Ego』も単なるアルバムではなく、コンセプトを持ったユニークなアルバムだ。LISAは今作の中で、設定や外見が異なるRoxi、Kiki、Vixi、Sunni、Speediという五つのキャラクターに扮し、キャラクターごとに楽曲を歌い分ける。Roxi役では「Rockstar」を披露し、Speedi役の「Lifestyle」では世界的ポップスターの日常をひけらかす。また、Vixi役では「FXCK UP THE WORLD」でここぞとばかりに悪役になり切り、「行く先々で騒ぎを起こす/そう、いつものことよ(Walked in causing havoc/Yes, that is a habit)」と歌う。そして、シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーの1998年のヒット曲「Kiss Me」をリメイクしたロマンチックな「Moonlit Floor」はSunniに扮し、曲の舞台をフランスに移して、「beneath the milky twilight(黄昏の空の下で)」という歌詞を「under the Paris Twilight(パリの黄昏の下で)」と言い換えている。 LISAの多彩な顔を映し出すというコンセプトを全体に貫きながらも、コラボレーションは健在だ。Kiki役で歌う「New Woman」では、スペインのスーパースター、ロザリアとタッグを組み、軽快で力強いエレクトロポップを聴かせ、1980年代ディスコ風の失恋ソング「Born Again」には、イギリス人シンガーソングライターのRAYEとアメリカ人ラッパーDoja Catが参加。「When I’m With You」ではアフリカ人シンガーのTylaを迎え入れ、2曲収録されている「Rapunzel」の一つではアメリカ人ラッパーのミーガン・ジー・スタリオンが登場、さらに同じく2曲収録の「FXCP UP THE WORLD」の一つではアメリカ人ラッパーのフューチャーを起用している。その結果、K-Popをベースにタイ人アーティストが手掛けた、いまだかつてないマルチカルチャーなアルバムが完成した。