クラムチャウダー

クラムチャウダー

1986年、新たな支持を確立していた時期に行われた全国ツアー「Display」からのライヴ録音。当時の最新シングル “新しいラプソディー”、この数年前に安全地帯が大ヒットさせた “ワインレッドの心” のセルフカバーといった有名曲を収めてはいるものの、全体的な選曲の傾向は若干マニアックだ。「氷の世界」に収録された忌野清志郎との共作曲に幕を開け、要所で沢田研二に提供した2曲(“ミスキャスト”“ジャスト フィット”)がアクを強める構成。そもそも陽水は70年代にフォークシンガーとして認知された存在だったが、その後はロック・テイストを導入しながら、とくに80年代に入る頃には現実離れした世界を綴るような特異な作風にシフトしていった。このアルバムではそうした鋭利な音楽文体とヒットソングのきらびやかさを絶妙に配しており、まさにクラムチャウダーのごとく入り混じった味わいが楽しめる出来となっている。曲ごとに見せるヴォーカル表現の深さも素晴らしい。秀逸なアレンジを手掛けている大村憲司(ギター)が率いるバンドは村上ポンタ秀一(ドラムス)、中西康晴(キーボード)、小林武史(シンセ)など腕利き揃い。このアーティストの長いキャリアにおける屈指のライヴ盤である。