Channel U

Channel U

「緑黄色社会の必聴アルバムを作ろうと思いました」。緑黄色社会の長屋晴子(Vo/G)は通算5作目のアルバム『Channel U』についてApple Musicに語る。前作『pink blue』より1年9か月ぶりとなる本作は、全国のライブハウスを巡るツアーと並行して制作された。穴見真吾(B)は「だからこそライブの熱量を保ったまま制作に向かえた」と振り返り、自身が考案したタイトルに込めた思いを明かす。「Channelは川や水路を意味するcanal(カナル)から派生した言葉で、“何かと何かをつなぐ道”という意味としても捉えられる。それともう一つ、僕たちの音楽を届ける“電波”の意味もあります。Uは“あなた(YOU)”のことで、あなたのチャンネルは無限大にあるということ、そして僕らのチャンネルもこれだけできたということを伝えたかった」 本作の中でもとりわけ実験的な色を帯びる「Channel Me」は、本作のコンセプトを象徴する楽曲。ポップ、ジャズ、ギターロック、ボーカロイド、ゲーム音楽などあらゆるジャンルの音楽が入り交じり、ノンストップでチャンネルが切り替わるような感覚をもたらす。「僕の母親がクラシックバレエの先生で、ギターの小林壱誓の母親はジャズダンスの先生だった。共に幼いころから創造的な舞台表現に触れ、シーンが次々と展開していく面白さに引かれていたから、それを楽曲に取り入れたかった」。「Channel Me」が生まれた背景について穴見が説明すると、長屋も続ける。「バンドを組んだころから、よくクイーンが話題に上がっていた。いろんな音楽を取り入れてどんどん展開していくような、一筋縄ではいかない曲を作ろうという思いがずっとあって、それが今回具現化できました」。必然的に曲の難易度は上がっていったが、メンバーたちの卓越した演奏技術があったからこそ新たなチャンネルは開いた。「キラキラした感じを出すのがpeppe(Key)の役目で、エモーショナルに聴かせるのが僕のベース、スパイスを足してくれるのが小林壱誓のギター。別に示し合わせたわけじゃないけど、それぞれの役割がフレージングに生きてる」と穴見はメンバーの個性を的確な言葉で表現する。そんな4人が一枚岩となって作り上げた本作について、ここからは長屋晴子と穴見真吾にいくつかの楽曲を解説してもらおう。 PLAYER 1 長屋:緑黄色社会はメンバー全員が曲を作れるので、アルバムごとに全員がクレジットされる曲を作る試みを続けています。これまでだと「Mela!」や「キャラクター」がそうなんですけど、「すごく好き」とか「元気が出る」という声を多くいただいたので、今回も全員で応援できるような曲を作ろうと話し合いました。作り方も毎回一緒で、まずpeppeと(穴見)真吾が曲を作り、私と(小林)壱誓が歌詞を乗せる。同じ作り方だからこそ新しい曲調にしたくて、作曲担当の2人にはジャンルや音像にこだわりながら試行錯誤してもらいました。 Monkey Dance 穴見:ギターの小林から「ベースヒーロー穴見真吾を見せる曲を作ってくれ」と言われ、どんと構えて作りました。同じフレーズを切り貼りするなど、DJが作るトラックを意識した部分もあります。 長屋:歌詞は「何を歌わせるんだ」という感じ(笑)。ラップのように韻を踏んだり、今までにないアクセントを置いた歌い回しをしたり、自分の中にはなかった歌い方をするのがすごい挑戦でした。何度も録り直しては研究して、自分らしさを見つけていきました。 僕らはいきものだから 長屋:(『第91回(2024年度)NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部の課題曲として)学生の方たちを頭に思い浮かべて作りました。自分の経験を通して、ちゃんと説得力を持って伝えたかったので、歌詞は自分の中学生時代を思い出しながら書きました。中学生時代は身長が一気に伸びたり、声変わりしたり、恋愛したいなとか、進路考えなきゃとか、いろんなことがあって心も体もガガッと変わる時期。うれしさもあったけれど、どこか置いていかれるような気もして、変化を怖がる自分がいたんです。でも大人になってみると、その変化はすごく素敵で尊いものだったなという気持ちがあるから、ぜひその変化を恐れないでほしいという思いを込めました。学生さんたちに向けて作ったこの曲が、アルバムに入ることによって、すべての“いきもの”に向けたメッセージになり、より広く受け取ってもらえる楽曲に聞こえると思います。 Channel Me 穴見:僕が『Channel U』というコンセプトを考えている時、同じタイミングで小林はこの曲のアイデアを持っていました。さまざまな曲のパーツが1曲の中に入り込んで混ざっちゃったみたいな曲。デモの断片を組み合わせたように聞こえますが、全パーツを一から新しく作ったので、制作にかなり時間がかかりました。小林は、SNSで15秒くらいの動画を切り取る時代にこういう曲を出して、おのおののパーツごとに広がったらすごいことになるんじゃないかという妄想をしていて、それが僕の『Channel U』のアイデアとぴたりと合致した。アルバムの核となり、世界観をよりディープにしてくれる曲です。 サマータイムシンデレラ 穴見:イントロのギターは“月9”ドラマの主題歌として「あれがかかったらあのドラマを思い出すよね」と言われるようなものを目指しました。 長屋:みんなで印象的なギターとは何かを吟味しました。最初は歌うようなリフを付ける話もあったけど、「もっと削ってシンプルにしたほうがいいんじゃないか」という意見が出て、確か真吾がハーモニクス(弦を弾いた時に聞こえる倍音)のアイデアを出した。それから何パターンもの音色を出し合って、ハーモニクス選手権をやりました(笑)。 オーロラを探しに 長屋:このアルバムはタイアップ曲がたくさんあり、それらが軸になっているからこそ、他の曲で自由に遊べる余白がありました。そこでメンバーそれぞれが主体となった曲を作ろうという話になり、私はこの曲を作りました。2024年にフィンランドにオーロラを見に行く旅をした経験が基になっています。オーロラは結局見られなかったけど、その時の経験は自分の人生観や価値観を大きく変えるもので、その気持ちを歌にしたい、自分が今生きてる証を刻みたいという思いを込め、生まれ年である「1995」を歌詞に入れました。自分のことだけを考えて作った曲ではありますが、メンバーが気に入ってくれて、こういう曲がアルバムにあってもいいなと思えた。聴いてくれる誰かの曲にもなってくれたらすごくうれしいです。

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