Mozart: The Complete Piano Sonatas

Mozart: The Complete Piano Sonatas

かつては希少だったモーツァルトのピアノソナタ全集だが、今では明確でてらいのない古典派らしいアプローチのものから、ベートーヴェンのように感情を引き裂くような独創的モードで奏でるものまで、幅広いタイプの演奏で楽しめる。しかし、日本の新星ピアニスト、藤田真央にとって演奏スタイルはさして重要ではない。彼は音符の背後にある深い意味を探っているのだ。藤田はApple Musicにこう語る。「興味を持ったのでモーツァルトのピアノソナタの演奏をいろいろ聴いてみたのですが、私の録音は他のものとは全く違う視点を持っていると感じています。私は確信を持って自身の解釈を投影したかったのです。それぞれのソナタはまったく異なる性格であり、独自の物語や背景を持っています。私はその個性を伝えたいと思いました」 藤田のモーツァルトのきらめくようなテクスチャ、生き生きとしたアーティキュレーション、驚くほど安定した技術、透明感あふれる音色、そして思わず引き込まれるようなテンポによる演奏を聴けば、彼がこれらのソナタの全曲演奏を行なった2021年のヴェルビエ音楽祭で、センセーションを巻き起こしたのも当然だろう。このパフォーマンスに感銘を受けたSony Classicalはその場で藤田に専属契約のオファーをし、すぐさまベルリンでモーツァルトのピアノソナタの全曲を録音をするという異例の行動に出たのだ。一連のピアノソナタの中で最も有名な楽章の一つである『Piano Sonata No. 11 in A Major, K. 331』の「Alla Turca」でさえも、藤田の手にかかると、楽曲の魅力に初めて触れる演奏のような、新鮮な感覚が醸し出される。 一方、より刺激的でドラマチックな『Sonata No. 14 in C Minor, K. 457』では、モーツァルトが表現の限界に挑み、まだ未発達だった当時のピアノの可能性を押し広げようとしていた感覚を演奏に染み込ませる。藤田は「今でも多くの人たちが、モーツァルトは明るくて楽しい人だったと思っているようですが、実際は非常に複雑な性格の持ち主でした」と指摘する。「彼の作品には確かに陽気で爽やかなものがありますが、『Piano Sonata No. 8 in A Minor, K. 310』のように非常に暗くて、不吉な闘争心を感じるようなものもあるのです。18のソナタのすべてでモーツァルトの創造的世界のさまざまな側面を浮き彫りにすることが私の狙いでした」

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