2019年、SNSにアップした楽曲をきっかけに、美しい波紋を広げるように注目度を高めてきた新進気鋭の多重録音／打ち込み音楽家による初のミニアルバム。リハーモナイズの手法を駆使して生み出す、耳に新しく心地良いメロディと、時間が伸縮するように刻々と変化する多彩なリズムパターンを軸とする。時に100トラック以上を用いてまとめられる楽曲は車窓の風景のように常に移り変わり、プログレッシブであると同時にポップに響く。そして、ユニークな言語感覚の下でイメージの断片をつなぎ合わせるように紡がれる歌詞は、複雑に入り組んだ音の迷路を進んでいくリスナーの想像力を解き放つトリガーとなり、新しい世界が広がっていくような音楽体験をもたらしてくれる。「芸術と治療」に象徴されるように、フィルムスコアやミュージカル、ジャズや現代のアヴァンファンクなど、一曲に詰め込まれた音数、情報力は膨大かつ濃密だが、吹き抜ける風のように創造力が躍動し、その音の軌跡が描く世界は外に向けて大きく開かれている。