Music Played By Humans (Deluxe)

Music Played By Humans (Deluxe)

さかのぼること1992年、テイク・ザットがスーパースターとして最初の絶頂期にあった頃、バンドの用心棒の一人が別の顧客の演奏を見せようと、ゲイリー・バーローをロイヤル・アルバート・ホールへ連れて行った。その夜の出演者はフランク・シナトラで、バーローは今でも、そこで目にした彼のショーマンシップが忘れられないと言う。「シナトラはあの夜を支配していました」と、バーローはAppleMusic に語る。「まるで指揮者のようで、バンドリーダーとしてテンポを決めていたんです」。テイク・ザットの結成30周年を記念する2019年のツアーが終わりを迎え、バーローの関心が2013年の『Since I Saw You Last』以来となる、ソロアルバムの制作へと向かい始めた時、バーローの念頭には当時の思い出があった。「アルバムのアイデアが浮かんだ時、このレコードを支配したいと思いました。ロビー(もちろん、ウィリアムズですよ…)みたいに胸を張って、バンドを引っ張っていく男になりたいって」。その成果である本作『Music Played By Humans』は、バーローの輝かしいキャリアの中でも、最も多くのアーティストと共演した、挑戦的なまでにアップビートなアルバムに仕上がっている。マイケル・ブーブレ、ジェームズ・コーデン、ビヴァリー・ナイト、ゴンザレス、バリー・マニロウなどをゲストに迎えて、ラテン色の強いポップから、バーローのビッグバンド愛が伝わってくる楽曲まで、大胆な飛躍を見せた。「今までになかったような複雑な曲を書いて、ファンに見せたかったんです」と語るバーローが、『Music Played By Humans』の収録曲を順に解説してくれた。Who’s Driving This Thingこのアルバムのことを考えた時、オーケストラの全セクションを紹介する曲を入れようと思いました。今までそんなことはやれなかったですから。それって極めてライヴ的なアプローチで、このアルバムでは、ライヴでやれない曲はレコーディングしないと決めました。とにかく楽しい曲で、歌詞も新境地へと踏み込んでいて、音楽的にも力強い。レコーディングの時は本当にわくわくして、ボーカリストとして一人で部屋にこもって、すごくリラックスできました。自分は肘掛け椅子に座ってパートを歌えるのに、他の人たちはみんな、文字通り椅子から身を乗り出さんばかりなんです。Incredibleアルバムのために最初に書いた曲の一つです。始まりはドラムループでした。私は飛行機に乗る時も、車に乗る時も、ノートパソコンをどこへでも持ち歩いています。そこに『スウィング』というライブラリがあって、乗りのいい曲がたくさん入っているのですが、その中で、とあるリズムが流れてきて。ただのリズムだったのに、すぐこの曲が聴こえてきました。メロディやサビも浮かんできたんです。何がきっかけで曲が生まれるのか、本当に分からないものですよ。車のクラクションや電話の音、ドラムのビート、もしくはキックドラムの音だったり。色々なものが曲を書くきっかけになることにいつも驚いていますが、この曲は文字通り、このドラムループを聴いた瞬間にはもう曲の大半ができていました。Elita90年代の後半に一度だけ、ツアーで南米を訪れた時があって、みんなでリオ・デ・ジャネイロのクラブに入りました。すると深夜頃、エリータというアーティストがステージに立ったんです。彼女はラテンダンサーのようで、店内がわっと沸きました。あのことを思い出すたびに、曲を書かないといけないと思って。この曲の本当のテーマは、女性たちの強さについてです。どういう境遇に置かれていようと、世界は女性たちのものになると歌っています。マイケル(・ブーブレ)はすごく興が乗って、自分のパートをすべて書き上げました。それからレコーディングの終盤になって、「ぼくの妻は南米の生まれなんだけど、そういった誰かを加えたらどうかな」と言ったんです。面白かったのは、2人だけで歌っていた時は、ロンドン生まれの男とバンクーバー生まれの男が、ラテンの女性について歌っているようにしか聞こえなかったのに、セバスチャン(・ヤトラ)が加わった瞬間、本物っぽく感じられたことですね。まるでコロンビアでレコーディングされたように響いて。ちょっとした材料が加わるだけで、曲が新しく生まれ変わるというのは、本当に驚きですよ。The Big Bass Drum眠くなるようなアルバムには絶対したくなかったので、あらゆるテンポに本気で取り組みました。それともう一つ、オーケストラが一斉に演奏するのはとても美しいのですが、オーケストラがテンポに合わせて演奏すると、本当にスリリングなんです。人々が初めて音楽に合わせて踊ったのがオーケストラですし、その長い伝統をたたえないわけにはいきません。でもこの曲をスタジオに持ち込んで聴いた時、「これってちょっと1950年代っぽい。2020年にふさわしい曲に感じさせるには、どうやって手を加えたらいいだろう?」と思いました。そこでリズムセクションをすべて取っ払い、Freemasonsのメンバーだった、友人のJames Wiltshireを呼んでリミックスしてもらい、ビートをたくさん作ってもらいました。こうした曲を現代的に感じさせる上で、極めて重要な役割を果たしています。現代のリスナーには幅広い音域が聞こえるので、例えばキックドラムがそういう風な音で鳴っていないと、一昔前のレコーディングのように響いてしまう。それは嫌だったんです。This Is My Time最初の頃にできた曲ですね。ポップソングを書いている時はいつも、シンプルさが鍵だと思っています。そういうわけで、例えばFメジャーセブンのコードを弾いたらまず、「だめだめ、そこはFでいかなきゃ」と自分に言い聞かせないといけません。このアルバムではCメジャーナインのコードを弾いたら、そのまま残しておきました。そういうレコードにしたかったから。自分の指で弾いたように音を響かせ、それをリスナーにも聴いてほしかったんです。Enough Is Enough (feat. Beverley Knight)この曲に取りかかった頃は、ボサノヴァのビートを使って、例のラテン系の道を突き進んでいました。そんな時に一度、ブラス隊とセッションをやったら、そこでのラテンっぽいプレイが、すごく気に入って。「Enough Is Enough」のアイデアが浮かんだ時には、やったぞ、と思いましたよ。またもや、ラテン系のいい曲ができそうだって。そこで親友のビヴァリーに声をかけたら、カルロス・ソーサを紹介されました。このアルバムではこの曲だけ、他の人にプロデュースを頼んでいます。オースティンにいる彼に曲を送ったら、ラテン系のバンドと一緒に音楽を仕上げてくれて。この曲に関しても、以前にセッションをやっています。その時には確かに、ロンドンでプレイしているように聞こえたのに、カルロスのオースティンでのセッションは、本当に素晴らしくて。それからビヴァリーが曲を聴いたら、「これなら私が歌えるかな」と言ったんです。確か一回半のテイクで、ばっちり決めてくれましたよ。Bad Libranいつか星座の歌を書きたいと、昔から思っていて。星座って面白いじゃないですか。もっと言うと、奇妙ですよ。私は水瓶座ですが、ちっとも天秤座らしくない女の子についての歌を書きたかった。それでこの曲を書いていたら、ある時、すべての星座の名前を挙げないといけないことに気づいて。パズルみたいでしたね。この曲を書くのは本当に楽しかった。演奏に取り組むのもすごく楽しかったです。この曲では、最高のブラス奏者たちを何人か使っています。この曲のセッションには、『スター・ウォーズ』で演奏したプレイヤーたちも参加しているんですよ。Eleven (feat. Ibrahim Maalouf)「Eleven」は、いつものラテンっぽい曲の枠ですね。それとイブラヒム・マーロフが参加しています。彼のアルバムが大好きなんですが、本当に個性的な演奏スタイルの持ち主です。レコーディングしたのは最初の頃で、歌詞をようやく書き上げたところへ、イブラヒムが現れましてね。当初はデュエットの予定でしたが、最終的には歌うのは私だけにしました。この曲もコードをたたえるような曲で、美しいコードがいくつか使われています。この曲のグルーヴ、ボサノヴァの乗りは、ただただ本当に格好いいと思いますね。Before We Get Too Old (feat. Avishai Cohen)この曲は私の人生観そのものです。「僕らはここで、生きている。何かやりたいと思ったら、今すぐやろう」という感じですね。明日がどうなるなんて、誰にも分からないじゃないですか。そしてこの曲も、(イギリスの人気コメディアンコンビの)マーカム&ワイズっぽく仕上げています。目顔で語る、みたいな。ちょっぴりストーリー性もあります。書いていて本当に楽しい曲で、自分で笑っていましたよ。この曲には(ベーシストの)アヴィシャイ・コーエンが参加しています。彼の演奏が大好きなんです。彼がベースを弾くと、まるで別の楽器が鳴っているようで。本当にすごいプレイヤーですよ。数テイクで決めてくれました。あの午後は本当に楽しかった。作るのがすごく楽しかった曲です。Supernaturalこの曲ではJames Wiltshireにビートを作ってもらいました。その中に速めのスウィングみたいなビートがあって、歌うのがすごく楽しかった。アルバムの曲順はなかなか決められませんでしたね。最初の頃は焦点が定まっている気がしたのに、それがどこかでズレてしまい、「さてと、これをどうやってまとめよう?」と悩んでしまうんです。最終的にはうまくいったように思います。アルバムを最後まで通して聴いたら、心地よく聴けたので。とにかく多様性のある作品を作りたかった。このアルバムはそれを追求するチャンスだったので、できるだけバラエティのあるサウンドを心掛けました。Oh What A Day (feat. Chilly Gonzales)チリー・ゴンザレスは面白い人ですね。正直なところ、2人で音楽を作っているより、喋っている時間のほうが長かったくらいです。彼は天才的なピアニストですよ。最終的にはチリーをフィーチャリングした曲というより、アルバム用のセッションのような感じになりました。とにかく素晴らしい一日でしたね。面白い話がたくさんあって、すごく楽しかった。What Leaving’s All About (feat. AleshaDixon)アリーシャ(・ディクソン)は確か最後のゲストで、残念ながら、Zoomでレコーディングすることになって。でも彼女は古い友人で、真のプロです。その場に現れたら、自分のパートをきっちりこなして、最後に新しい部分を加えてくれました。曲そのものは、彼女が現れる前にはほぼ仕上がっていました。アルバムの中では暗めの曲の一つです。失恋の歌はたくさん書いてきましたが、この曲は知人の体験が基になっています。彼らは別れを、ポジティブな経験に変えました。失恋を長くて苦しい体験ではなく、自分たちが本当に前へ、上へと進むための機会と受け止め、前向きにそういう選択を取ったんです。The Kind Of Friend I Need (feat. James Corden)この曲をさかのぼっていくと、私の父に行き当たります。父はマーカム&ワイズが大好きで、昔はよく、家族みんなで番組を観ていました。彼らが番組でよくやっていて、私が大好きだったのが、相棒の歌です。男性が女性のために歌うデュエットとは違いますが、ラブソングです。2人の男がその曲を歌い合うんですが、そこで話がややこしくなります。国際的なインタビューの場では、イギリスでは友人に愛していると言うと、伝え方によっては侮辱になるということを説明しなければなりません。これを分かってもらうのは、本当に難しくて。私と一緒にそれをやれるのは、(英国人コメディアンである)ジェームズ・コーデンくらいでしょう。そこで曲を送ってみたら、気に入ってくれました。I Didn’t See That Coming楽しいことやゲームをあれこれとやり、素晴らしいミュージシャンたちとの大小のセッションをすべて終えた後、自分とピアノだけでプレイしたくなりましてね。それでこう思いました。このアルバムを締めくくる最良の手段は、自分のこれまでの人生を総括することだ、と。この歌はそういう歌です。過去50年間に起きた想定外のことすべてについて、歌っています。アルバムの最後を飾るのにふさわしい曲だと思いますよ。Let’s Get Drunkこれはですね、ブリキ缶にそう書いてあったんです。他の国ではどうか分かりませんが、イギリスでは仕事がうまくいったら、お祝いします。ダイエットに成功した人がいたら、そう伝えます。素敵な人だと思ったら、そう褒めます。チャンスがあったら、その時にそうする。それがイギリス流です。この曲はそう、2人の旧友が再会して、「とにかく最高の夜を過ごそうぜ」と言う。そういったイメージの曲ですね。The Day The World Stopped Turningこの曲は元々、チリー・ゴンザレスに弾いてもらうはずでしたが、「Oh What A Day」を聴いたチリーが、そこに新鮮なスタイルを見出したようで。おそらく、「The Day The World Stopped Turning」のような曲は、過去に飽きるほど演奏してきたんでしょう。そういうわけで、この曲は私がピアノを弾いて、仕上げることになりました。自分の中では、ちょっぴりクラシックっぽい曲ですね。ここ数年で何度かミュージカルの仕事をしたのですが、そうした経験が自分のメロディを磨いてくれたのは間違いありません。「The Day The World Stopped Turning」は、メロディが輝いている一曲でしょう。とても繊細で、複雑なメロディを持っています。You Make the Sun Shine (feat. Barry Manilow)バリーに会いに行った時には、4曲持っていました。実のところ、最初は「This Is My Time」のアレンジをお願いしようと考えていて。ところが「You Make The Sun Shine」を聴いたあとで、バリーがこう言ったんです。「ああ、これは『Can’t Smile Without You(涙色の微笑)』だね。あれはかなり変わったテンポで、最近は誰もやらないんだ」って。そう言われて、確かにこの曲はちょっとパクりかもしれないと気づきました。バリーがピアノを弾いて、それを録音したところで、不幸にもロックダウンが始まってしまって。仕方なく、オーケストラもロンドンで収録しました。元々はバリーがすべてロサンゼルスでやるつもりでしたが、それでも一部を手伝ってくれ、スコアを書き上げて、こっちですべてをレコーディングしたんです。バリーはZoomで参加してくれました。

ディスク1

ディスク2

国または地域を選択

アフリカ、中東、インド

アジア太平洋

ヨーロッパ

ラテンアメリカ、カリブ海地域

米国およびカナダ