

「15歳までに私から生まれたものを注ぎ込んだアルバムです」。15歳の現役高校生シンガーソングライター、tuki.はファーストアルバム『15』についてApple Musicに語る。本作のオープニングを飾るのは、2023年リリースのデビュー曲「晩餐歌」。彼女が中学3年生の時、親から出世払いでレコーディング費用を援助してもらい制作したこの曲は瞬く間にバイラルヒットし、2024年の年末にはNHK紅白歌合戦で披露されるまでに至った。まさにシンデレラストーリーを地で行くtuki.だが、制作スタイルを大きく変えることはなく、「ノートとアコギとペンで…部屋の隅っこでジトジト作ってます」と笑う。 「ジャンルにとらわれず、面白いと思ったことにたくさん挑戦してみました。あくまでポップスですけど、ジャンルレスなアルバムになっていると思います」。彼女の新たな試みが詰まったアルバムには、10代ならではのやわらかな感性がみずみずしく息づいている。中でも「純恋愛のインゴット」は、「晩餐歌」で見せた憂いある世界観とは大きく異なるポップな作風が新鮮な驚きをもたらす。「アルバムの中でも飛び道具的な立ち位置の曲です」とtuki.は説明する。「重い恋愛をポップに描いてみました。勢いでラップしてしまったので、注目して聴いてほしいです(笑)。普段レコーディングは1回か2回しか録らないのですが、ラップのノリやテンションが難しくて、珍しく何度も録り直しました。ラップが始まったら誰かフィーチャリングで入ってきたって思うんじゃないかな(笑)」 地図にない道を行く覚悟を示す「月面着陸計画」には、音楽と共に人生を歩みだしたtuki.の覚悟が感じられる。「自分たちのレーベル名『月面着陸計画』がタイトルになっている通り、アルバムの中でも大事な一曲です。前向きで元気になれる曲を意識して作りました。飛びはねられるような縦ノリのアレンジにこだわったので、飛びながら聴いてほしいです」。そして「アルバムの中でも大好きな一曲」と明かすのが、思いを通じ合わせることの大切さを歌う「アイモライモ」だ。「誰かとのコラボレーションで一緒に歌ってみたいなと思い、会話形式で歌詞を作ったら面白いんじゃないかなと考えて作り始めました。結局はコラボレーションする相手がいなかったので諦めました(笑)」 初々しいラブソングの「シーソー」は、人と人が織りなす繊細で複雑な関係性を描いている。「この曲は実体験を基に作りました。どんな人でも一回は同じような気持ちになったことがあるんじゃないかな? 恋するって難しい…」。そう打ち明けるtuki.は、ポップシーンの第一線に躍り出たアーティストでありながら、素朴でピュアな女の子の一面をそのまま持ち続けている。10代の彼女は、月の満ち欠けのように日々変化し、成長している最中。その瞳に映る一瞬一瞬を歌に刻みながら、はるかな未来へと歩みを進めていく。