

「夜の始まりにそっと寄り添える作品にしたいと思っていました」。シンガーソングライターの夜々は、ファーストアルバム『0:00』についてApple Musicに語る。川谷絵音がアレンジを手掛けた「Lonely Night」で2025年にデビューした彼女は、Tomi Yoが編曲した「センセーショナル少女」、いしわたり淳治が歌詞プロデュースを担当した「I Hope」など、実力派クリエイターたちと制作を重ねながら表現力を磨いてきた。そしてアルバムを作るにあたって、自分の特性を見つめ直し、時計の針が0時を指した瞬間に入り込む魔法の世界というコンセプトを思い描いた。「時計の針が0:00を指す瞬間って、楽しかった日も、うまく笑えなかった日も、すべてが一度リセットされるような気がしていて。そこからまた新しい一日が始まる、あの少しの高揚感やキラキラした気持ちを音楽で表現できたらいいなと思ったんです」 トラックメイカーのp.e.t.と組んだ「Coffee」、Night Tempoとのコラボレーション曲「Nonsense」など、夜の気配に身を委ねるような楽曲からは、恋に揺れる姿が浮かび上がる。心の奥をちくりと刺す痛みが続くまま夜は深まり、やがて孤独の底にそっと光が差し込む。その光を追うと、andropのアレンジによる「Ray」へとたどり着く。「このアルバムを聴いている時間は、私がみんなの手を引いて、12曲の物語と共に幻想の世界へ連れていくようなイメージで作りました。眠る前の小さな魔法みたいな存在になれたらうれしいです」。静かに願いを語る彼女に、ここからは全曲の解説をしてもらおう。 0:00 一日の終わりと始まりが交差する、特別な時間。この曲は、そんな0:00の空気をそのまま閉じ込めたくて作りました。時計の針が動き出す、その瞬間にそっと寄り添えたらうれしいです。ここから夜々の物語が始まります。 Lonely Night 夜は一人になれる時間でもあるけど、本当は最も心から会いたい誰かを思い出す時間かもしれない。強がりながらも、温もりを探している自分を書きました。完璧じゃない夜も、そのままでいいと思いたくて。そして、そう思ってもらえたらと願いながら歌った、夜々のデビュー曲です。 Coffee 気付いているのに、まだ認めたくない。苦手だったコーヒーがいつの間にか好きになっていて、恋の始まりに生まれる矛盾した気持ちを重ねました。苦さと甘さが混ざる瞬間は、少し大人になったみたいで、今もその感覚が少し愛おしいです。 YOU 時間みたいに、思いも静かに流れてくれたらよかった。前を向こうとするほど、あなたの後ろ姿が離れないことがあります。思い出は薄れていくのに、感情だけが鮮明なまま残っていて。「さよなら」を抱えたまま、それでも思ってしまう弱さも、今は自分の一部だと思えます。 Gravity 恋は重たくなるものだと思い込んでいた頃がありました。でもこの気持ちは私を縛るどころか、ほどいてくれた。隣にいるだけで、ありのままでいられる安心感。Kay Clackerくんの軽やかで壮大なサウンドに背中を押してもらいながら歌いました。 I Hope 靴擦れをしてでも、おそろいのスニーカーで隣を歩きたかった。いま自分の中にある優しさを全部、あなたにあげたかった。報われなかった物語ではなく、愛せたことそのものを肯定したくて書きました。あの頃の私と、いま誰かを大切に思うあなたへ向けた曲です。 Let go 期待に応えようとするほど、本当の自分が遠くなっていく気がしていました。でもある日、手放した瞬間にやっと深く息ができた。怖かったけれど、その選択は間違っていなかったと思えています。私自身が、私を救えたきっかけの曲です。 Nonsense 理屈よりも先に、心が走り出してしまう夜がある。正しいかどうかなんてどうでもよくて、ただ鼓動に従いたかった。Night Tempoさんとのスタジオセッションから生まれたトラックに、芦田菜名子さんのリリックが重なって、何度もループしたくなる一曲になりました。少し危うくて、でもきらきらと鮮やかな、私の大好きなシティポップソングです。 Gloomy どうしようもなく沈む日も、ちゃんと自分の一部だと思っています。明るい言葉では救えない感情もあるから、そのまま置いておきたかった。満たされないまま、それでも誰かを求めてしまう矛盾。静かに落ちていく中で見つけた、小さな本音を歌っています。 センセーショナル少女 大切な友達からインスピレーションをもらって生まれた曲です。純粋で、でもどこかはかなくて、急にいなくなってしまいそうな危うさがあって、その美しさをそのまま閉じ込めました。きっとその少女は、この曲の中でずっと心を灯し続けてくれる存在なんだと思います。 Ray 夜々の楽曲の中で、いちばん真っすぐな愛の歌です。私の人生に差し込んだ、温かい光の記憶。もう触れられなくても、確かに私を照らしてくれた愛があります。この曲を生み出せた自分に出会えたことを、心から誇りに思っています。