ツユの結成2周年を飾るセカンドフルアルバムは、重々しいピアノ独奏曲「強欲」で幕を上げる。そして、持たざる者の悲痛な思いを叫ぶ「デモーニッシュ」、行き詰まった生活に不満を募らせる「奴隷じゃないなら何ですか?」、理想に追いつけない人生を歌う「ルーザーガール」など、容赦なくシビアな楽曲が続く。悲嘆や不満、欲望、嫉妬…。ツユは誰もが無縁とは言いきれないネガティブな感情にフォーカスし、深層心理をえぐり出していく。しかし、人間のマイナス面を表現するだけでは終わらない。現実を真っすぐ見据える礼衣(Vo)の歌声と、腕利きのプレイヤーたちが紡ぐダイナミックなグルーヴは、いつしか聴き手の心を震い立たせ、どん詰まりの現実を打破するエネルギーを与える。オセロの駒を一気にひっくり返すような、鮮やかな逆転劇も不可能ではないと思わせてくれる。ネガティブな表現から生まれる不思議な解放感こそ本作が持つ魅力であり、そのパワーを今、多くの人が求めている。
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- 2020年
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