SABRINA HEAVEN

SABRINA HEAVEN

いきなりのハードなギターの鳴りと、その直後の空白、これが4回。1曲目の "ブラック・ラブ・ホール" はこのバンド特有のハイ・テンションな世界がエイトビートで突っ走っていくアップリフティングなナンバーだが、それが硬質なミディアム・テンポのロック "太陽をつかんでしまった" と続くところで、アルバムは不気味な重たさをはらんでいく。もともとマイナー・コードで構成される楽曲が多いバンドだが、ここでは90年代の彼らのサウンドの中核を成していたガレージ・ロックのアタック感ではなく、熱さと喪失感が混濁しているようなエイトビートに還元されているのだ。リズムを裏で刻む "ジプシー・サンディー" などは彼らが敬愛するザ・クラッシュの中期以降の姿と重なる。また注目すべきは "マリアと犬の夜" と大作 "サンダーバード・ヒルズ" で見せるジャズへのアプローチ、あるいは最後のピアノをメインに据えたインスト "NIGHT IS OVER" で、こうした横ノリのサウンドからは、この時期の4人が自分たちの向かう先を激しく模索していたことがわかる。2003年にリリースされた本盤はバンドにとって最後のフル・アルバムであり、この制作をもって同年秋の解散が決断されたことを思うと、じつに沈痛な聴き応えがある。

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