前作「シンシロ」でロックとクラブ・ミュージックとのミクスチャーを明確に表していたサカナクションが、その歩調を一気に強めて作り上げた通算4作目。タイトルは海水と淡水が交差する汽水域をもじった造語で、人が実生活を送る空間で混ざり合ってできるものを示唆している。つまりバンドが、それだけ音楽性のさらにダイナミックなハイブリッドに挑んでいるというわけだ。エレクトロの使用が効果的なバラード “潮”、フロントマンの山口一郎がリスペクトする画家パウル・クレーへの気持ちが託された “klee”、その彼のフォーキーな資質が浮き彫りになった “壁”。ヒットを記録した “アルクアラウンド” は歌謡曲に通じるほどのポップネスと躍動的なダンス・ミュージックとの混合的なイメージだが、アルバム全体としてはそれを支点にしながら、ぐっと幅を広げている。しかも各々の曲ではメンバーそれぞれのセンスが活かされている瞬間が多々あり、バンド全体がボトムアップしたような印象が強い。そして多重的なコーラスとストリングス・ノートが盛り上げる最終ナンバー “目が明く藍色” は、まるで組曲を思わせるような壮大さを誇る。時間をかなり費やしたというこのアルバムには、バンドの着実な進化と進歩がうかがえるのだ。
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