2009年屈指の新人アーティストとして注目される阿部真央の1stフル・アルバム。大分出身の彼女は、曲を書き始めてまだ間もない16歳の頃にアマチュア・コンテストの全国大会に進出した逸材で、周囲になじめなかった高校の授業中に曲を書いていたというエピソードを持つ。作風は若い女の子のせつない恋心や戸惑いといった心のありようをそのまま吐き出したようなものが目立ち、しかもそこには孤独感がつねにつきまとっている。大分在住時は路上でひとりで弾き語りライヴをくり返していたそうで、そのため、バンドでの演奏曲でもアコースティック・ギターが鳴り響く。もっともリード曲の "ふりぃ" や "MY BABY" (生まれて初めて書いた曲)あたりはその頃から大好きだというアヴリル・ラヴィーンのパワーをそのまま受け継いだかのようなポップさがあり、そんな両極端さもまたこの人の大きな魅力だ。怒りを爆発させるような迫力をはらんだ "デッドライン" 、演歌にも通じるほどの深いエモーションが息づく "情けない男の唄" などには、彼女が途方もないポテンシャルを秘めた存在であることが感じられる。内面の暗部を音楽のエネルギーとして還元する才能の、鮮烈なデビュー盤である。
- SHISHAMO