松本孝弘によるギターのインストゥルメンタルで始まる今作には、どこか心機一転したかのような空気感が漂っている。それはポップなメロディを持つ「イチブトゼンブ」、アッパーな「DIVE」といったシングル曲からも明らかだ。もちろんストリングスの響きが強烈な「MY LONELY TOWN」、祈りが込められた雄大なバラード「PRAY」など、B’zらしい重厚感も健在ではある。ただ、アルバム制作の初期段階では福岡やハワイでレコーディングが行われており、そこには彼ら自身が新しい何かを感じ、取り入れたいという心理があったのではないか。メロディアスなロックの「long time no see」はGS(グループサウンズ)を、親しみやすい歌メロの「夢の中で逢いましょう」は昭和時代の歌謡曲をそれぞれイメージして書かれるなど、新生面も開拓。ユニークなリズムの「だれにも言えねぇ」も含め、全体的に風通しのいい曲が並ぶ。また、「イチブトゼンブ」他数曲には、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミス、マーズ・ヴォルタのJuan Aldereteが参加している。変わりゆく、それでいながら最高にロックなB’zの姿が堪能できる作品だ。
- 2021年
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- INABA / SALAS