すべて時代のせいにして

すべて時代のせいにして

2008年の本作リリース直後には自らの還暦を記念して60曲超を唄いきったオールナイト公演も話題になった泉谷、なんと7年ぶりにリリースのオリジナル・アルバム。それだけに濃いめに搾り出した楽曲揃いの作品で、人間と社会を厳しく見つめながらも、そこにエネルギーを吹き込もうという彼の歌の様式はここでも生きている。タイトル・チューンは、時代に理由を押しつけて現実逃避をする人間の弱さを告発しながらも<自分の限界きめるな>と唄うロック・バラード。 "時よ止まれ 君は美しい!" は盟友・忌野清志郎とのユニット<忌野・泉谷スパイスマーケット>でも唄われていた曲だ。また、 "生と死の間に" "回想" は親しくしてきた人間を失った心模様が唄われており、その悲痛さの向こうに泉谷自身のリアルな感触がうかがえる。藤沼伸一(元アナーキー)、人時(元黒夢)といった名うてのメンバーによるシンプルでストレートなバンド・サウンドは、歌の力強さとその裏の暗喩めいたメッセージを表現する上で、じつに堅実なサポート役を果たしている。70年代フォークの時代からここまで40年弱にわたって活動してきた泉谷だが、そのコアな部分は微動だにしていないことが伝わってくるパワフルな一作だ。

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